明るい未来に向けて(中学生:塾だより7-8月号)

東北新幹線が今年で開業から40周年を迎えました。これを記念して、一部の編成で開業当初の緑色のカラーリングを再現したことが話題になっています。筆者も子供の頃、上野駅から緑色の新幹線に乗って青森県にある祖父母に家に行ったことを覚えています。当時は東京駅始発ではなく、上野駅の地下ホームから乗り込んだのでした。

現在は東京駅から新青森駅を結び、北海道新幹線に直通して新函館北斗駅まで運行している東北新幹線ですが、40年前の1982年6月23日の開業当時は大宮-盛岡間の運行でした。その後、南は上野駅(1985年開業)、東京駅(1991年開業)へ、北は八戸駅(2002年開業)、新青森駅(2010年開業)へと段階的に延伸、そして2016年に開業した北海道新幹線(新青森-新函館北斗間)に接続し、現在に至ります。

新幹線と言えば速さが特徴のひとつです。40年前の開業当初は最高速度210km/hでしたが、現在では一部編成が宇都宮駅以北の一部区間で320km/h運転を行っています。2030年度が予定されている北海道新幹線・札幌駅延伸が完成したときには、最高速度360km/h運転を可能とする新型車両が投入され、東京-札幌間を4時間半ほどで結ぶとされています。

今回は東北新幹線を話題にしましたが、日本で最初の新幹線といえば、東京-新大阪を結ぶ東海道新幹線です。1964年10月10日に開幕した最初の東京オリンピック、それに合わせて同年10月1日に開業した東海道新幹線は「世界初の高速鉄道」と言われています。いつしか「Shinkansen」は、そのままで外国人に通じる国際語となりました。新幹線は、日本が生み出した、日本が世界に誇るものの1つであると言えます。

新幹線が全国各地に積極的に整備されていた頃、日本は経済成長を続け、人口も増加し続けていました。今でも新しい新幹線路線の建設は続けられていますが、その勢いは鈍化しています。人口減少社会に突入した現在、地域によっては新しい新幹線路線は本当に必要なのかといった議論もあります。また、新型コロナウイルスの影響でオンライン会議やリモートワークが一般的になりました。そのため、コロナが収束しても移動需要は以前より減少するという予測もあります。

時代は移ろい、社会情勢もどんどん変化します。必要とされるものもそれに合わせて変わってきます。今後も日本が成長を続けるには、こうしたことに対応していかなければなりません。

新幹線に代表される鉄道技術は、今もなお世界的に評価されており、アメリカやインドで日本の新幹線技術を活用した新線の建設計画が進んでいます。しかし、別の分野に目を向けるとまた違った様子が見えてきます。ICT機器や技術の面ではどうでしょうか。スマートフォンやタブレット機器において、日本メーカーのシェアは非常に低いものとなっています。また、それらを通して利用するサービスにおいても日本のものは少ないと思います。Google(YouTube含む)、Apple、Amazon、Facebook、Twitter、TikTok、LINE…ここに挙げた企業名やサービスの中に、日本発のものは1つもありません。

最近、日本人の低い給与が問題になっています。ここ20年間、先進国の中で日本だけが平均収入が上がっていないとも言われています。本当に優秀な人は、日本の企業を見限って海外で就職先を探すといった話もあります。

最後は少し激しい話になりましたが、時代や社会情勢への対応の遅れが、現在の日本の状況に結びついていると思います。みなさんがこれからの時代を生き抜いていくためには、変化を恐れない勇気が必要です。そして、今まで通りの生活ややり方で本当に良いのかを常に自問自答し、日々絶え間なく改善を図っていくことが大切です。その過程では失敗も多くすることになりますが、その失敗からも学んで次に生かしていく、そういった姿勢が求められているのだと思います。

さらに、変化に対応するには、これまでがどうだったかを知らなければなりません。みなさんが今、学校や塾で学んでいることには、人類がこれまでに経験してきた様々なこと、そしてそれを元にした教訓が込められています。それらをしっかり学び、身につけることが変化に対応するための準備になります。

もうすぐ夏期講習です。将来のために、より多くより深く学ぶ夏にしましょう。そして、これまでの自分の生活や勉強のやり方を見つめ直し、変化を恐れずに改善を図りましょう。その先に、明るい未来があるはずです。