夏に向けて、日々懸命に(中学生:塾だより5-6月号)

小中学校で新年度が始まってから早いもので1ヶ月経ちました。気候も良くなり、昼間は暑さを感じる日も増えてきました。

新年度が始まるにあたり、1年間の目標を考え、その実現に向けた取り組みを始めた人も多いと思います。しかし、4月のうちは新鮮な気持ちでがんばれたものの、5月に入ると疲れが出てきて、取り組みが続かなくなるというのはよくある話です。

続けることはとても大変なことですが、一度「やろう」と思ったことは、何とか一歩踏み出してやってみてほしいと思います。そして、うまくいかなくなったときは、やり方を変えたり、少し規模を縮小したりしてでも続けていくことが大切だと思います。どんな小さなことでも積み重ねていけば、いつか役に立つ日が来るかも知れないからです。

iPhoneやiPad、MacBookなどの製品で知られるApple(アップル)の共同創業者の1人に、同社のCEO(最高経営責任者)も務めたスティーブ・ジョブズという方がいます。ジョブズは大学を中退した後も興味がある授業だけはもぐり込み、哲学やカリグラフィー(西洋書道)を学んだそうです。

後にジョブズは、Macintosh(マッキントッシュ・Appleが開発と販売を行っているパソコン)の開発を主導します。その際、当時は一般的には軽視されていた文字フォントの細やかさや美しさを重視しました。そのことが、デザイン関連の仕事をするデザイナーに支持されました。今日でも、デザインや映像制作などに携わる人々の間で、AppleのMacBookシリーズは高いシェアを誇っています。

ジョブズがカリグラフィーを学んだ理由は、後に開発するパソコンに搭載するためではなく、ただ興味があったからだと思います。しかし、興味を持って「やろう」と思ったことに取り組んだ結果、それが後に日の目を見ることになりました。そして世界的な企業の発展につながったのです。

もちろん、取り組んだこと全てが将来役立つとは限りません。中にはマイナスの影響を及ぼしてしまうものもあるでしょう。それでも、長い人生を考えれば、様々なことを経験し、学んでおくことはプラスの面が多いと思います。

昨年亡くなった作曲家のすぎやまこういちさんは、55歳から30年間以上にわたり、「ドラゴンクエスト」シリーズのゲーム音楽を担当しました。最初の「ドラゴンクエスト」が発売されたのは1986年のことでしたが、最近では、東京オリンピックの開会式でも楽曲が使われたので、聞いたことのある人も多いのではないかと思います。中でも有名な『序曲』は、わずか5分で作曲できたそうです。ただ、新聞社のインタビュー記事ですぎやまさんは、「5分+それまで生きてきた55年分が詰まっている。」と述べられています。

55年間の人生経験があったからこそ、5分という短い時間でも、長く多くの人々に親しまれる楽曲ができたのだと思います。やはり、経験を積むことは重要であると感じます。

学校や塾で教わることだけでなく、自分が興味を持って調べたり人に聞いたりしたこと、普段何気なく聞いたり目にしたりするもの、あらゆることが学びです。日々の生活すべてにおいて様々な経験が得られます。これらの学びや経験を大切にして下さい。一つひとつのことに対して、手を抜かずに一生懸命取り組みましょう。そういった姿勢が、近い将来大きな結果に結びつくかも知れません。

新年度が始まって少し経った時期だからこそ、今一度、4月からこれまでの自分の生活や行動を振り返り、気合いを入れ直して夏に向かっていきましょう。