読書へすゝめ(小学生:塾だより9-10月号)

 “「天は人の上に人をつくらず人の下に人をつくらず」と言いますね。だけども今、広くこの人間世界を見わたすと、かしこい人やおろかな人、貧(まず)しい人も金持ちもいる。人の上下ありまくりで、理想と現実(げんじつ)が雲とドロぐらいちがう! これはいったい、どうなっているんですかね! でもね、昔の本に書いてあります。「人間、学ばなかったら知恵(ちえ)がなくなる。知恵がない人はバカになる」つまり、バカかどうかは、学ぶかどうかで決まります。世の中には、むずかしい仕事とかんたんな仕事があります。むずかしい仕事をする人を人々はありたがり、高いお金をはらうのでその家は豊(ゆた)かになる。かんたんな仕事しかできない人に人々が大金をはらうことはない。このようにして社会的な差(さ)が生まれますが、このちがいの根本はその人に学問があるかないかであって、神様が定めた運命みたいなものではないのですよ。”

 とまあ、福沢(ふくざわ)諭吉(ゆきち)先生の大ベストセラー「学問のすゝめ(すすめ)」の書き出しを少しパクってみました。明治(めいじ)時代の人たちには、この本の内容(ないよう)は大ショックだったでしょうね。自分が貧しいのは身分のせいだと思っていた人に、「それは君が勉強してないからだよん」って言ってきたわけですから。この本を読んで希望(きぼう)を見出し、たくさん勉強するようになった人もきっと多かったことでしょう。

 みなさんは今、いっしょうけんめい勉強をしていますね。その勉強していることの中で、「これは面白い!」って思える部分を、これからがんばって探(さが)してみてください。みなさんは好奇心(こうきしん)のかたまりなので、思ったよりもずっと多く見つかるかもしれません。そして「面白いこと」が見つかったら、できるはんいでそれをより深く学んでほしいのです。今はネットの中におもしろい情報(じょうほう)がたくさんころがっています。動画をたくさん見て学ぶのも良(よ)いでしょう。

 でも、「いちばん面白いこと」つまり最高(さいこう)の情報の多くは、現(げん)時点ではまだ「本」の中に書いてあると私は思っています。最先端(さいせんたん)の技術(ぎじゅつ)を研究している人たちが、まず自分のやっていることを発表するのは論文(ろんぶん)です。そして本はその論文にもっとも形が似(に)ていますし、論文がまとまって本になることもあります。また、好きなことを極(きわ)めた人たちの本だなには、その好きなことに関係した本が必(かなら)ずあるはずです。私にとって最高に面白かったストーリーも、映画(えいが)やテレビではなく本でしか読めないものでした。ぜひ好きなことを深くふかく学んでください。そしてできるだけはやく、「読書」という最高の道へ進みましょう。